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Chairs は歴代の名作椅子をモチーフに、心身の中から湧き上がる宇宙 ― 自然の中に生きる様々な生命体や精霊の湧き上がる姿と融合させて思いのままに描いた作品です。それは絵を描くというよりも、古代人が絵文字や記号を壁や土器に切り刻んでいく行為に似ているかもしれません。
脚、座、背そして腕を持つ人体のような姿の椅子は家具の中でも特別なものです。ファッションや芸術にも大きな影響を与え、たくさんのデザイナーや芸術家たちがそれらの椅子と大きく関わってきました。それほど多様な力の作用を与える家具は椅子以外にはなく、建築家と家具デザイナーもその時々の要求に従い、全力を傾注して椅子のデザインに挑戦してきました。私もそんな椅子に魅せられて
Chairs を制作するに至りました。2001年からライフワークとして制作を続けています(現在約500点)。
私の作品に見方はあり ません。作品を観て何か想像がふくらみ、心動かされることがあれば本望です。
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久遠の過去から悠久の未来へとすべての時に存在している「地・水・火・風」のような原初の生命体。それらと同次元の意味をもった「かたち」のかけらが泉のように湧いては、月のあふれる光のようにやさしく降り注ぐ。その「かたち」のひとつひとつには生命の細胞のような美しい形態と秩序があり、時間の眺望の中で絶え間ない変質を続けている。風の吹く音、鳥のさえずる声、地面に降り注ぐ雨の音、私たちの心臓の鼓動や全身を流れる血液の脈動。同じくしてこの「かたち」の発露があり、絵画や彫刻、映像といった形の中だけで、完結するものではありません。その「かたち」は絵画や彫刻になる遥か以前からの「かたち」であり、悠久の未来へと永遠に続く「かたち」でもあるのです。
これらの作品は木という素材の表面にその「かたち」が現れ出たということに他なりません。それらの「かたち」は集まっては散り、宇宙・地球における森羅万象と常に共鳴し合いながら輝き、「この世からあの世へと超えた」いたるところすべてに息づいているのです。わたしはこの「かたち」が普遍的永続性をもち、小さな細菌から動植物、石や鉱物、「地・水・火・風」にいたるまで、すべての生命が根源的に持っている「永遠の今」を象徴する「愛のかたち」であることを信じてやまないのです。
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愛する人と心温まる生活をしたい。心のこもった温かいお茶を飲みたい。時にはお酒を嗜みながらおいしい食事を楽しみたい。暖かい寝床で眠りたい・・・。ただ贅沢をしたいと言っているのではありません。妥協せずに、生きることに真剣に取り組みたいと願っています。日々の生活の中から出る、コーヒー豆の絞りかすや、お茶の葉の出がらし、ワインのコルク、鶏をむしった後の羽、貝殻、食卓を灯すキャンドル、心なごむ無数の葉や小さな枝・・・。私の生活に深く関わるこれら自然物の素材自体を美しく、いとおしく思えるのです。その思いの結晶となったものが、RECYCL'art(リサイクラート)作品といえるのかもしれません。
私たち人間の肉体は自然物です。最後は土に返ってゆく存在です。人を愛し、自然を愛すること、そこから大いなる喜びと美しさを見出すこと。私はそこに本当に生きる意味を求めたいのです。
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